一時ほどではないが「山ガール」は今も健在だ。中高年でも健康のため、あるいはリフレッシュもかねて山歩きや登山を楽しむ人は少なくない。でも遭難や転落、落石事故、心臓疾患による死亡事故も後を絶たない。美しい山は危険と背中合わせなのだ。
長野県では2013年に300件の遭難事故があり、死亡・行方不明が74人も。これは、交通機関が発達して、有名な山へのアクセスが便利になり、「体力の低下を意識しない中高年者」や「山の怖さを知らない初心者」による無理な登山が増えたことが一因だ。
山の事故がいっこうに減らないことから、長野県と長野県山岳遭難防止対策協会は14年、登山者が自分の力量に合った山選びができるよう、北アルプスや八ヶ岳など、県内の夏山主要登山道100ルートの難易度表「信州 山のグレーディング」を作成した。いわば「山の偏差値」だ。
それぞれのコースで登るのに必要な体力レベルを10段階の数字で、技術レベルをA~Eの5段階のアルファベットであらわした。最低の1Aは、ロープウェーで山頂近くまで行ける八ヶ岳の北横岳。最も難易度が高い9Eは北アの大キレット(北穂高岳~槍ヶ岳間)だ。参考データとして、年間260万人が訪れる東京の高尾山も例示した。こちらは2Aだ。
この長野県の試みは山梨、静岡、新潟県にも広がり、15年はこの3県でも「山の偏差値」が公開されている。年間20~30万人が登る富士山は5~6B。そう簡単な山ではないことがわかる。富士登山はちょっとしたブームだが、くれぐれも軽い気持ちで登らないほうがよさそうだ。
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