現在地: トップページ » GoGetterz News » 学び続けるために、脳の提供を請う研究者たち

学び続けるために、脳の提供を請う研究者たち

記事をシェアする

アメリカでは5月最後の月曜日は「Memorial Day(メモリアルデー)」と呼ばれる祝日だ。戦没者を追悼する記念日である。全米各地で式典が開催され、建国以来の戦没者を追悼するのだが、残念なことに今でも戦没者の数は増えている。

アメリカ軍―United Armed Forces-には、陸軍(Army)、海軍(Navy)、空軍( Air Force)、海兵隊( Marine Corps)、 沿岸警備隊( Coast Guard)の5つの部門があり、軍人の数は130万人を超えている。そして今日もアフガニスタン、イラク、シリアといった戦闘地域では激しい戦が続いている。新たな負傷者、死者がこれからも増えていくのだ。日本では2013年に傷痍軍人会は解散をした。第二次世界大戦以降傷痍軍人を生み出さずに済んでいるからだ。しかしアメリカでは傷痍軍人の健康、社会復帰、精神にきたす影響などが大きな問題になっている。そして今年のメモリアルデーには、 「戦闘地での負傷度合いを調べるために brain(脳)の提供を求む!」といったニュースがとりあげられていた。

生前から臓器提供の意思をはっきりさせておくことは一般的になっている。しかし、兵士に脳の提供を働きかけるといった動きはまったく新しい。そして今の一番の課題は、戦闘地域で突然亡くなった兵士の家族にどうアプローチして脳の提供をお願いするかということだという。提供された脳を保管する「Brain Bank (ブレーン・バンク)」は全米中に8か所あり、そのひとつ、ワシントン大学のブレーン・バンクには、2000の提供された脳が保管されているという。しかし、これらはアルツハイマー病などいずれ死に至ることを覚悟していた患者たちが死後の提供を約束し実現したもの。若い兵士たちの突然の不幸な死の直後に「脳をください」と切り出すのは、むずかしい。それでも脳が欲しい研究者たち。いったいそれは、なんのためなのだろうか?

最近アメリカでは、元アメフト選手たちの多くが、神経障害があると診断され話題になった。研究者たちは、アメフトの選手のように兵士たちも度重なる脳震盪や頭部外傷が引き金になって神経に異常をきたし、痴呆症や神経慢性外傷性脳症(Chronic traumatic encephalopathy; CTE)を発症しているのではないかと考えている。しかし、これは死後の脳の病理学的検査でしか診断することができないらしい。だから多くの兵士の脳の研究をしたいのだ。若くて健康な一般人の脳も比較するために研究したい。そして実際にどんな脳障害が起きているのかを把握し、戦闘地域から戻ってくる兵士たちの健康管理に役立たせたいという。兵士の明るい未来のために兵士の脳がたくさん欲しいのである。しかし、若い脳なんてそんなにたやすく手に入るわけではない。研究の意図を知ってもらい、少しづつ認知されるよう努力しなくてはならない。

突然息子がこの世を去り、絶望的な悲しみにうちひしがれていた時、「息子さんの脳を提供してください」とのリクエストを受けびっくりした母親がいる。臓器提供は息子の意思だった。しかし、脳も?今まで聞いたこともなかった脳提供。それでも彼女は脳提供にに賛同した。

「息子の目を提供すれば、彼の目は生き続けることができる」
「息子の脳を研究に捧げれば、学び続けることができる」

なんとも立派なお母さんである。
研究者たちはこのお母さんのように、命は亡くなっても脳から多くを学ぶことができることを啓蒙し、脳の提供を臓器提供と同じように賛同してもらえるよう頑張ってほしい。
まだまだ未開の兵士の脳の研究。
戦闘地で戦う兵士がいる限り、必要な研究だ。

戦闘地での苦難を乗り越え、戻ってきた兵士たちが前向きに生きていけるように、
ゴーゲッターな研究者たちは、今まで誰もやったことのない研究のはじめの一歩を踏みだしている。

戦闘地で散る命が無駄になりませんように。

]]>

記事をシェアする

コメントを残す