「都会では自殺する若者が増えている」――井上陽水が「傘がない」でそう歌ったのは1973年のことだった。その傾向は今も変わらないようだ。
内閣府の「地域における自殺の基礎資料」によると、東京都で2014年度に自殺した20歳未満は、前年度から20人増えて73人。20~29歳は34人減った(346人)が、この年代の「学生・生徒」の自殺は150人。前年から22人も増えている。
東京都の自殺者数は、1997年の2014人から98年に2740人に急増。それ以降は毎年2500人から2900人。ピークは2011年の2919人。その後、2015年は2471人まで減ったものの、東京都が全国(速報値2万3971人)に占める割合で10.3%にあたり、最多のままだ。
東京都の30代以下の自殺者は、2014年の速報値で全体の30.3%を占めており、全国平均の26.3%と比べて若者の割合が高くなっている。東京都の10~30代の死因も、2014年は1位が自殺だ。ちなみに、「死因が自殺」は40代で2位、50代は4位で、上の世代に比べ若者が自殺で亡くなる率が高いことがわかる。
東京都の自殺者を月別でみると、新年度を前にした3月が約10%と最も多く、次いで1月の9.2%、ゴールデンウイーク明けの5月(8.9%)、6月(8.8%)と続く。春の卒業・進学・就職のシーズンは自殺の季節にもなっている。
東京は人口も多いし、その中の若者の構成比も高い。統計上、自殺が多くなるのは必然ともいえるが、東京都は「東京における自殺総合対策の基本的な取組方針」(2013年11月改正版)に基づき、電話相談やリーフレットの作成、大学生が主催するワークショップや講演会の開催などで「若者が孤立しない」よう工夫を凝らし、若者が自殺に追い込まれないよう対策を講じている。 ]]>