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「棚からぼたもちパキスタン編 〜パキスタンのお葬式〜 」三原理絵

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GoGetterz Voice 新企画 The Voicers Report は、世界各地で活躍する10人のゴーゲッターで構成された The Voicers が各々の活躍の現場から情報発信をしていきます。 今回は、GoGetterz コース「女性にしかできないことをする!パキスタンで起業を目指す」 のエキスパートで、パキスタンに移住し、衛生教育・女性と子供のマーケティングビジネスを立ち上げた女性起業家、三原理絵さんです。  

記念撮影のその場所は…

先日、普段住んでいるパキスタン南部の都市・カラチから、北部のイスラマバードへ出張に行きました。折しもこの出張の前日は、宗教絡みで始まった暴動が全国へ飛び火し、電話やネットが繋がらない通信規制が始まると同時に、全国の主要道路は暴徒化するデモ隊を防御するために封鎖。私の会社も臨時休業となり、出張直前まで、明日はどうなることかと思案していました。 案の定、この1日だけでも多数の死傷者がでました。 毎日の通勤路でも、過積載のトラックが横転した事故など数知れないため、ニュースになっていない事件事故を加えたら、きっと相当数になるでしょう。 そして、冒頭のイスラマバード出張の際、同行社員が初めてのイスラマバードだったこともあり、仕事の後に数時間だけ観光の時間を作りました。 その際、彼女が行ってみたいと選んだ場所は、Daman-e-Koh(ダーマネコ)という、日本人的には、なんだか猫がたくさんいる場所っぽく感じるのですが、ウルドゥー語で「山の中腹」を意味する展望台。まさに、マルガラヒルという丘の一部で、ヒマラヤ山脈に繋がる4000年前からの歴史と、自然に満ちた美しい丘陵です。  
シャーファイサルモスクとマルガラヒル
このダーマネコ展望台入り口すぐそばに、ちょっとした石造りのステージのような場所があり、そこでローカル観光客たちが思い思いのポーズでセルフィを撮っていました。 なんだろうとよく見ると、ステージの土台には、「Air Blue Memorial」の文字。 運転手さんに聞いたところ、2010年に発生したエアブルー202便墜落事故の現場だそうです。乗客乗員152名全員死亡というパキスタン最悪の航空機事故で、現場から少し離れた場所には、犠牲者の名前が刻まれた石碑もあるとのこと。 日本で言えば、御巣鷹の尾根のような慰霊と鎮魂の場所になっていてもおかしくないのですが、そこは、ある意味、日々死が身近なパキスタンだからなのか、その人の亡くなり方は、すべて神が決めているという宗教による死生観なのか。どこか明るい感じに驚きました。  

葬儀を見届ける

数ヶ月前、「知人の友達の従姉妹のお母さ」と言う、全く面識もなければ所縁もなかった方のお葬式に参列して来ました。 多くの人の祈りがあれば、故人のためになるから、との誘いは表向きの理由で、実際には「ミハラサン、パキスタンのお葬式、行ったことないでしょ?せっかくだから見に行こう」という誘い言葉に素直について行きました。 お香典は?服装は?など、伺う前に確認をすると、いつものシャルカミ(民族衣装)でOKで、お香典の文化はないとのこと。その日はたまたまエメラルドグリーンの洋服を着ていたのですが、まさかの、明るい色で葬儀参列は、人生で初めてのことでした。 伺った場所は故人のお宅で、病院で亡くなったという故人は、すでに自宅へ戻って清拭の準備をしているところでした。 イマームと呼ばれる導師がお祈りをした後、女性の故人の場合は、同性親族の女性が、日本でいえば納棺師のような専門職の人のサポートで、故人の体を水で洗って拭いてあげます。洗い方、場所も経典に書かれているそうで、遺族たちはその通りに、泣きながらも思い出話で笑顔が出るなど、最後の温かい時間を過ごしていました。 そして、「葬儀」に女性が参加したのはここまで。 その後、故人は3枚の白い布に包まれ、親族男性たちが棺をモスクへ運んで行きました。この後は、男性たちがモスクで葬儀をし、墓地へ運んで埋葬します。女性たちは、男性たちが帰ってくるまで、チャイを飲みながら故人を偲んでいました。 今回私が参列させてもらった葬儀は、中流階級の一般的なものだったようで、自宅が狭いので清拭ができない、または、富裕層のお宅では、葬儀会社に清拭を依頼し、そのままモスクで葬儀を行うそうです。また、パキスタンは家族が海外に点々としているケースが多く、本来なら24時間以内に埋葬するところ、家族全員が揃うまで冷蔵庫で保管してもらうケースも増えているとのこと。 特に、カラチの場合は人口も多く、最近では保管場所も墓地も足りなくなっていて、それがビジネスになるかも。と言っている人もいるくらいです。  

お墓参り禁止?

元々、イスラム教の教えでは、墓石もおかずに誰がどこに埋葬されているのか、身分に関係なく自然と土に還ることを良しとし、先祖信仰もないため、お墓参りもしないのが一般的だそうです。が、パキスタンでは少し様子が違っていて、白の大理石で綺麗な墓標を作り、周囲を薔薇で飾って綺麗に管理しています。そして、定期的に家族でお墓参りをしています。 そもそも、14世紀に作られた世界遺産のタッター遺跡群や、カラチ市内から20kmほどのところにあるチョウカンディのお墓群も、その後のイスラム教国家・ムガル帝国支配下になっても継続しています。そして、意外だなぁと思ったのは、お祈りを捧げる対象は神だけのはずが、国内至る所にイスラム聖者廟があり、人々はお花や祈りを捧げに廟を訪れます。家族が健康でありますように、息子に良縁がありますように、など、様々なことを祈るそう。教義的にはNGのようですが、宗教の教えと自分たちの文化を両立させているように感じます。
チョウカンディ
 
チョウカンディの女性のお墓
ちなみに、亡くなってから清拭〜モスクでのお祈り〜納棺して埋葬の一連の流れでかかるコストは、最近、物価の上昇とともに値上がりしていますが、10,000〜15,000Rs(1Rs=約1円)とのこと。ここには、公営のお墓代も入っています。 お墓の管理人に心付けを渡せば、敷地内の良い場所が確保でき、掃除をしたりお世話をしてくれます。狭い土地に人口が密集しているカラチでは、お墓不足が問題になっており、「うちの近所のお墓は、今、7階になっている」と言う知人の話を聞いてみたら、つまり、7人分地層が重なっているとのこと。 場所によっては、遺族が1年以上、お墓参りに来ていないと判断したら、掘り起こしてお骨をひとまとめにし、土を補充して次の方の場所を作るらしい。 それが嫌な場合は、管理人に管理を頼むか、月命日などに定期的に訪れて、ちゃんと遺族がケアしていますよ、という姿勢を見せないといけないそうです。 やっぱり、お墓参りの概念があるんだなぁと、先祖信仰のある日本で生まれ育った私としては、少しホッとしたことでした。 …とは言え、  

どこで眠る?

「三原さん、死んだらやっぱり日本がいいでしょう?」 たまに(特に日本人から)聞かれるのですが、私の答えはノーです。 というか、どこでも良いのです。 どんなに財を得ようが、死んだら何も持っていけないですし、立派なお墓を作っても中で寝ている私は外観は見えないので、私は、死んでからどう処理してほしい、という希望は特になく、場所もどこでも良い。 それよりも、どのように生きて終えるかを大事にしたいので、自分の死後は適当にしてもらえば良いのです。それなので、近所の墓地にでも埋葬してもらえばいいなと、ローカルの友人には話しています。 いずれその時が来た時、自分のお葬式がどんな風なのか、ちょっと興味深いところでもあります。   英語もスキルアップも!学びから未来をデザインする GoGetterz メンバー登録は無料!「学ぶ」はこちらから ★オンラインで「教える」はこちらから
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